特別寄稿 ほほえみ第64号(平成26年6月号)

特別寄稿 ほほえみ第64号(平成26年6月号)

2014.06.01

『元気の源は「きれいな舞姿」に』

      平下 由紀子 (二代目藤間勘登栄)

 日本舞踊の藤間流藤栄会を主宰しています二代目藤間勘登栄と申します。じっとしているのが苦手な私は、絶えず動いているからでしょうか。同居している長男夫婦が共働きのため、家事や孫たちの世話は日課。限られた時間の中で日本舞踊の稽古に励んでいます。周囲の人が思うような忙しさは自分自身で感じておりません。時間に追われる生活の中でも、全てに集中するように行動しているため、体力的に疲れることはあっても、精神的に疲れることがあまりないのです。それが「元気な姿」に映るのでしょうか。心身ともに健全でなければ元気とは言えないと思いますので、体力づくりに加えて日々リラックスした気持ちでいることを心掛けています。

 母である初代藤間勘登栄に師事して幼少時から日本舞踊を始め、この道は半世紀以上になりました。日本舞踊の魅力は、さまざまな演目の踊りを通じて、現実と別世界の多彩な役柄を演じられることでしょうか。お姫様や芸者、町娘、武士など数え上げればきりがない色々な役に挑戦できます。驚かれる方がいるかもしれませんが、ここに掲載されている写真は2年前に私が躍った姿で、このような格好もします。

 日本舞踊の踊り手は、日々、地道な稽古を続けていなければ、きれいな舞姿を保つことはできません。そのため、定期的に舞台に立つ人は稽古を怠ることができないのです。スポットライトを浴び、華やかに見える舞台で演じるのは実は大変なエネルギーが必要で、お客様に喜んでもらえる踊りを披露するには、日常の稽古や体力づくりが欠かせないと言えます。

 私の場合は、目標に向かって続ける努力は苦痛でなく楽しく、「毎日の小さな努力が大切」と自分に言い聞かせています。ウォーキングをしなければ、とか何か運動をしなければ、と義務的に体を動かしても長続きしないと思いますし、毎日、自分のペースで適度に無理せずに体力づくりに励むことが長続きにつながると思います。

 振り返りますと、これまでに舞台でさまざまな演目を踊ってきましたが、「これは良かった」と満足できる踊りは一度もありません。「日本舞踊は一生修行」という思いを持っており、満足できないからこそ「次の舞台に向けて頑張ろう」との気持ちがわき上がり、それが、周りの人から言われる元気や若さの秘訣になっているのでしょうか。ただ、年齢を重ねますと、体力は若い頃には及ばず、思うように体が動かずにさみしく感じることもあります。しかし、日本舞踊では重ねた経験の分だけ深みのある踊りが披露できると思っていますし、気持ちを前向きに精神的にリラックスした状態で、稽古を含めて日常の生活を送っております。

 毎日の地道な努力の積み重ねが、舞台での美しい舞姿となって表れますように願っているのです。

 

 

『平下さん、寄稿有難う』

      理事長   笠島 學

 平下さんとは高陵中学時代の同級生で団塊世代です。たまたま同級生がやっているスナックで一緒になり、元気溌剌な処を文章にしてよ、と頼んだら、快く引き受けてくれました。めったに会いませんが、会うと明るく歯切れよくしゃべり、踊りをやっている為に姿勢が良く、実際の年齢より随分若く見える彼女から若さと元気の素をもらっています。