特別寄稿 ほほえみ44号掲載(平成17年12月号)

特別寄稿 ほほえみ44号掲載(平成17年12月号)

2005.12.01

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 安君先生は中朝国境の吉林省延吉市の出身で、彼が最初に日本(富山医薬大)に留学した時にお世話したのが縁で15年間の親交があるが、当時指導した上山先生らと瀋陽にある中国医科大学を9月中旬に訪ねた。

 

 瀋陽は富山県と友好提携を結んでいる遼寧省の省都で、かつては奉天と呼ばれていた人口八百万人の大都市であるが、地下鉄は無く、道路にはバス、車、自転車、バイク、人で満ち溢れ、運転マナーが悪いため、日本人の歩行者が横断歩道を渡るには相当の覚悟がいる。

 

中国医科大学は毛沢東が名づけた伝統ある医科系だけの大学で、千五百床の付属第一医院(第二医院もある)は夕方まで混雑していたが、入院時や外来受診は一家総出で来院することも一因であろう。X線フイルムは患者が保管するのにも驚いた。VIP専用の外来や病棟があり、PET診断も行っていた。6人部屋は非常に手狭だった。ICUは日本と遜色は無い。安先生は今夏に教授に就任した若きエリート外科医で、年間四百例の心臓手術をこなしている。日本では激減したリウマチ熱による弁膜症が多いが、貧富の差があり、保険が普及していないため、手術が必要な人の10から15%しか手術が受けられないそうである。北朝鮮や内モンゴ

ルに招かれて手術をしてきたこともあり、心臓移植にも取り組んでいる。

 私は安先生の通訳で、訪問看護の講義をしたが、多くの婦長さんが参加して下さり、基礎の医師や学生の姿もあった。30分遅れ(これが常識らしい)で始まり、我が法人の訪問看護ステーションの活動を中心に日本の住宅を説明しながら話したが、中国医科大学では日本語クラスがあるため、日本語のスライドは理解できるらしい。質問がたくさん出たが、介護保険は他の国でもやっているのか?ナースのストレス解消法は?リハビリ医を目指すのに日本のどこが一番いいのか?その費用は?などであった。普段はそんなに質問が出ないそうである。最後に次期総婦長さんから大学名入りの漆器をいただいたが、熱心に聴いてくれた婦長さんらと友好的な時間を過ごせた。この機会を与えてくれた安先生に感謝したい。

 

理事長  笠島 學