第13回全国介護老人保健施設福岡大会 2002.10.3 にて発表

在宅復帰への取り組み

〜サービス担当者会議を通して〜

介護老人保健施設おおぞら

支援相談員  西本 葉子

<はじめに>

 介護保険は「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保険医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」と第一条に掲げスタートした。その中で介護老人保健施設は家庭復帰施設として大きな役割を担っている。当施設においては利用者の高齢化・要介護度の重度化などが年々進んでおり、介護老人保健施設としての機能を発揮することの難しさを痛感している。在宅復帰の実現に向けてサービス担当者会議を定期的に開催し、家族との信頼関係の構築に努めている。サービス担当者会議を通して実施してきた家庭復帰への取り組みを事例を交えて報告したい。

<当施設の現状>

  入所が一年を超える利用者の平均年齢は85.3歳、平均要介護度は3.84となっている。利用者全体の平均年齢は平成134月では平均年齢が81.4歳、平均要介護度が3.18であったが、平成145月は85.5歳、平均要介護度は3.68となっており年々上昇し続けている。

また、平成13年度の家庭復帰者の入所前状況は2/3が家庭という結果であったが、一年超入所者の入所前状況は2/3が病院からの入所となっている。

<サービス担当者会議>

 当施設では5人のケアマネージャーが入所者のケアプラン作成を分担している。全職員もそれぞれのケアマネージャーごとにグループ化しケアプラン作成に携わっている。サービス担当者会議以外にもカンファレンスを開くことにより利用者の状態の変化に応じたケアプランを作成している。

 サービス担当者会議・カンファレンスには施設長をはじめ多職種の視点で利用者のニーズを捉えるよう努めている。この春からは管理栄養士も参加することとなった。

サービス担当者会議では家族から要望等を伺い、ケアマネージャーからは本人の状況を伝達・ケアプランの説明を行う。各職種からは専門の立場からのコメントを行いながら家族と共に在宅生活の可能性を模索する。必要に応じて在宅サービスの説明を行い、要介護度に応じた利用可能な在宅サービス案を提示できるようにしている。

 サービス担当者会議の定期的な開催により家族と職員が直接触れ合う機会が増え、より在宅生活を見据えた介護を提供できうると考えられる。

<事例〜家庭復帰成功例と困難例〜>

事例1(成功例)

事例2(困難例)

事例3(成功例)

名前・性別

T氏(女性)

M氏(女性)

N氏(女性)

年齢

87

91

89

要介護度

要介護3

要介護2

要介護4

傷病名

脳梗塞

高血圧症

変形性脊椎症

C型慢性肝炎

慢性腎不全

骨粗しょう症

多発性脳梗塞

老年期痴呆

日常生活自立度

1(歩行器歩行)・Ua

1(歩行器歩行)・Ua

1・Va

家族構成

一人暮らし。市内に長男家族在住。

主介護者は長男。

長男・孫夫婦・曾孫との5人暮らし。

主介護者は長男。

長男はすでに死亡し長男の嫁・孫娘との3人暮らし。

キーパーソンは次男。

入所経過

12.5.12家庭より入所。

14.4.1家庭へ退所。

11.1.7 H病院より入所。

9.6.16 家庭より入所。

10.4.10 H病院入院のため退所。

12.1.13 H病院より入所。

入所前状況

家庭。

10.4〜H12.5当施設の通所を

利用。

7より転倒傾向にてT病院の入退

院を繰り返す。

10.1.30〜H11.1.7 リハビリの為

H病院に入院。

1回目の入所前は家庭で過ごすも在宅サービスの利用経験はない。

10.4.10〜H12.1.13 肺炎のためH病院に入院。

現在

14.4.1から長男夫婦と同居。

当施設の通所を週4回利用中。

長男は家庭で介護する自信がない

とのことで入所継続を希望。特別養

護老人ホームに申し込まれる。

14.6.1から次男夫婦と同居。

当施設の通所を週3回・訪問介護を週3回利用中。

<考察>

  事例1と事例2を比較・検討し家庭復帰を困難にしている要因には、家庭からの分離、入所サービスの割安感・安心感、在宅サービスの利用経験の有無の三点があると再認識した。

@家庭からの分離

施設入所以前にも入院等で自宅から離れて過ごした時間が長ければ長いほど自宅での生活には戻りにくい。その期間に本人・家族の気持ちが家庭より施設での生活へ依存してしまうのではないだろうか。在宅復帰を実現させるためには身体的・精神的にも本人と家族の関係が密接なつながりを維持できるよう援助していく必要がある。

A入所サービスの割安感・安心感

在宅介護は家族の精神的な負担が入所利用時以上に大きい。その上、在宅サービスの利用度合いによっては入所時よりも費用負担が大きくなることもある。入所サービスの割安感・安心感を考えると入所志向が強くなることも当然ではないだろうか。

B在宅サービスの利用経験の有無

入所前に家庭で何らかの在宅サービスの利用経験があれば在宅生活のイメージをつかみやすい。病院等医療機関からの入所者は障害をもってはじめての在宅生活となり本人・家族の不安もより大きくなると思われる。在宅サービスの利用経験のない本人・家族に家庭復帰の話を行うには在宅の生活をイメージしやすい方法を工夫し提案していく必要があると思われる。

また、事例3のように重介護を要する方の家庭復帰が成功した要因の一つに、定期的なサービス担当者会議の開催があげられる。サービス担当者会議で毎回家庭復帰の検討を行わなくとも家族へ本人の様子やケア内容を伝えることによって、家族は本人の状況を把握することが可能である。定期的なサービス担当者会議の開催は本人・家族の関係の希薄化を防ぐのに有効であると思われる。

 今後利用者の高齢化・重度化がますます進行すると考えられる。その動向の中で利用者・家族の声が伝わるサービス担当者会議を重視し介護老人保健施設としての役割を遂行できるよう努めたい。