日本呼吸管理学会誌 Vol.13 No.1 2003 より               もどる

長期臥床によりADLが低下したCOPD患者の運動療法

光ヶ丘病院

大和 寿久  豊田 恒良  湊 麻由美

はじめに

COPDでは呼吸苦、易疲労性、意欲の低下が運動療法をすすめる上で主な阻害因子となる。長期臥床になると筋萎縮、関節拘縮などのいわゆる廃用症候群が加わり、寝たきりとなることが少なくない。運動療法は呼吸苦、運動耐久性、QOLを改善させるのに効果的であることは知られ、COPDの患者には効果的な治療として確立されている。しかしながら、長期臥床したCOPDの患者にも運動療法が有効であることは今でも知られていない。そこで今回、呼吸苦とADLの改善につながった2症例を報告する。

対象

平成13年に入院した長期臥床によりADLが低下したCOPDの2症例である。

方法

運動療法としてADL訓練、歩行、ストレッチ、下肢筋の強化を行なった。パルスオキシメーターでSPO2 85%以下または新Borg scale 5以上になったら運動療法は中止した。

呼吸苦(Borg scale)ADL(Barthel index)、筋力(Daniels)を評価し比較検討した。

症例1

86歳 男性 20歳〜50歳過ぎまでの約30年間タバコを4050本/日喫煙していた。在宅酸素療法を含む加療・経過観察を行っていた。経過中、気道感染を契機に呼吸不全の増悪を来たし、入退院を繰り返していた。平成12925日に呼吸不全の増悪があり某病院に入院したがADLが徐々に低下し寝たきりとなる。同時に肺炎を繰り返し、一時意識障害・摂食障害が続く時期があった。リハビリ目的にて平成13326日当院に入院した。運動療法は平成13年3月27日より開始した。平成1353日ポータブルトイレを自力で使用しようとして転倒して右第6肋骨骨折となる。平成13年7月28日より一般浴槽で入浴可能となる。平成13年9月22日自宅へ退院した。

症例2

76歳 女性 喫煙歴はなし。慢性呼吸不全が平成1311月初旬より増悪し、寝たきりとなり同年119日某病院に入院する。症状安定し、元の介護療養病院に戻る。治療困難なため平成13123日当院に入院した。入院2日目に肺梗塞を発症し、PH 7.48 PaO2 37torr PaCO2 32torr(酸素6L/分投与マスク使用)と急激に悪化した。運動療法は128日より寝返り訓練を開始した。病状安定し、平成143月8日介護療養病棟へ転棟した。

結果

血液ガス

                  症例1

入院時

 PH7.42  PaO267torr  PaCO240torr(酸素3L/分)

退院時

PH7.43  PaO266torr  PaCO244torr(酸素3L./分)

                  症例2

入院時

 PH7.42  PaO289torr  PaCO244torr(酸素1L/分)

転棟時

 PH7.43  PaO259torr  PaCO241torr(酸素3L/分)

 

呼吸苦

     症例1

     症例2

入院時

Borg scale7

入院時

Borg scale2

退院時

Borg scale2

転棟時

Borg scale1

ベッド上での起き上がり動作で評価

筋力(Daniels)

筋肉名

     症例1

     症例2

入院時

退院時

入院時

転棟時

腹斜筋

2

4

4

4

腹筋

2

4

3

4

腸腰筋

3

4

3

4

大腿四頭筋

3

4

3

4

中臀筋

3

4

3

4

膝関節屈筋群

3

4

3

4

ADL(Barthel Index)

     症例1

     症例2

入院時

20/100

入院時

20/100

退院時

80/100

転棟時

60/100

1.      呼吸苦と体幹、下肢の筋力、ADLは改善した。運動療法は長期臥床によりADLが低下したCOPDに対して効果があった。

2.      SpO290%以下になったら運動療法を中止している報告があるがSpO285%以上で運動療法は可能であった。

考察

長期臥床したCOPDは呼吸苦、廃用性筋萎縮、関節拘縮等のため寝たきりになり易い。呼吸苦の減少とQOLの改善が呼吸リハビリテーションの重要なゴールの一つである。2症例とも呼吸苦と体幹、下肢の筋力は改善し、ADLは向上した。酸素療法を受けている長期臥床によりADLが低下したCOPDでも転倒・感染に留意し、積極的に運動療法を施行することにより呼吸苦と体幹、下肢の筋力、ADL改善は十分可能であると考える。パルスオキシメーターでSpO2を計測することで客観的に呼吸苦を評価可能であり、安全に運動療法を施行する上で重要だと考える。SpO290%以下になると運動療法を中止している報告が多数あるが、2症例ともSpO285%以上で運動療法を施行できた。運動療法を施行する上で許されるSpO2の下限を検討する必要性が示唆された。しかし、症例数が少ないので継続して検討する必要がある。